映画字幕翻訳家・通訳

戸田奈津子さん

愛がなければ、
字幕は作れない。

これまでに1,500本以上におよぶ映画字幕の翻訳を手がけた戸田奈津子さん。
グランドエクシブ鳴門のある四国は、馴染みの深い土地柄とのこと。
そのお話を伺っていたら、いつしか映画の話に…。
「字幕翻訳の仕事は、映画を愛していない人はゼッタイにやってはいけない」
と笑いながら話してくださった戸田さんの映画愛あふれるお話の中から
本誌に掲載できなかった逸話をお届けします。

戸田さんが子どもだった戦争中は、四国に疎開されていたとのこと。この鳴門周辺のこともよくご存じなのですね。

四国の大自然に囲まれて
過ごした子ども時代

 父が愛媛県の出身だったので、そこに疎開していました。だから、鳴門にも馴染みがあり、私にとっては懐かしい場所です。
 疎開中には大変なこともあったけれど、人生で唯一自然に囲まれて暮らしたいい時代として思い出に残っています。子どもだったから戦争の恐ろしさを理解していなかったし、空襲の焼夷弾も花火みたいに感じていたのね。そうしたら、後年、私と同じように戦争をとらえていた映画と出会ったの。ジョン・ブアマン監督の「戦場の小さな天使たち」という作品で、監督自身が大戦中のロンドンで体験したことが描かれています。その中で、子どもたちはドイツ軍の戦闘機に向かって「サンキュー!」と言うのです。空襲があると学校が休みになるからうれしいのですね。そのシーンを見て、あ、私と似てるな、と感じました。ブアマン監督は私と同い年なので、体験が似ているのでしょう。洋の東西を問わず、子どもは単純で楽天的なんです。

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さて、撮影の合間のこぼれ話をもうひとつご紹介しましょう。老眼が進行中のスタッフが、「最近、字幕を最後まで読めなくなってしまいました。歳のせいでしょうか?」と、戸田さんにうかがったのです。

字幕の長さと年齢と映画の将来

 違う、違う(笑)。私の先輩たちが作っていた字幕は、二度読めたの。それぐらい文字数が少なかったのよ。ところが、最近は徐々に字幕が長くなる傾向にあるようですね。時代の移り変わりでカタカナ語が増えているせいもあるけれど、読み切れない字幕は、観客に対してとても失礼なことだと思います。だから、映画館で字幕が長すぎると感じた時には、劇場のスタッフに直接伝えたり、アンケートなどに書いたりして、しっかり伝えてください。そうすれば、映画会社にも伝わりますから。
 そもそも今の中高年は、若者に比べて文字を読むのが得意な世代でしょ?それなのに読み切れないのだから、活字離れが進んでいる若い世代の人たちなら、なおさら読めないはず。このままでは、将来の観客を失うことにつながるのでは?と、とても心配しています。

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戸田さんのお話は、すぐにでも映画館に行きたくなるようなエピソードの連続でした。
インタビュー、ありがとうございました。