俳優

篠井英介さん

日本の美しいものが
大好きです

日本の芸能を特徴づける「女方」の伝統を受け継ぎ、舞台上に魅惑の世界を描き出す稀有な俳優、篠井英介さん。
その研ぎ澄まされた感性のベースは、故郷である金沢の町によって育てられたと話します。
インタビュー中には、芸能の世界だけでなく、日本の歴史にも精通された歴史マニアの一端も見せてくれました。
変幻自在に広がる好奇心こそが篠井さんの原動力になっているようです。
金沢の町と歴史にまつわるエピソードをいくつかご紹介します。

―金沢という町から受けた影響を、どのように感じておられますか

故郷のありがたさ、愛おしさを改めて感じます

 私が金沢にいた頃は、高度成長期のよい時代で日本全体が活気に包まれていました。金沢はとりわけ贅沢な街なので、戦後はいち早く伝統的なものを復活させ、大事にしていましたね。日曜日の朝は甘いものを食べてお抹茶を飲んだり、街を歩けば三味線の音が聞こえてきたり……。そうした雰囲気そのものに育てられたのだなぁと、感じます。でも、若い時って自分の街から飛び出したくなっちゃうんですよね。私が俳優をめざして東京へ出たのは、高校卒業後のこと。いまは、室生犀星の詩のように「ふるさとは遠きにありて思ふもの」の境地です。離れているからこそ、ありがたさ、愛おしさがわかります。人間っておもしろいですね。

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―お城を紹介する旅番組ではナビゲーターを務められましたが、歴史もお好きなのですか

往時を生きた人びとの体温を感じる場所に興味があります

 お城や古い建物を巡ったり、絵画や彫刻を観るのが好きなんです。でもね、正直なところ、戦国武将の誰々がつくったお城で防御のためにこんな仕掛けがあるんだぞ、といったエピソードには、あまり興味がありません。だから、あの番組のナビゲーターとして私がふさわしかったのか、どうか……(笑)。私はどうしても美しいものに目が引きつけられてしまうので、お城そのものよりも御殿のほうに興味をそそられるのです。京都の二条城のように殿様や姫様が本当に住んでいた場所、家来たちが暮らしていた武家屋敷など、当時の人々の体温を感じたいのかもしれませんね。

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演じる役の人柄や人生を洞察する篠井さんの眼力は、日本の美しいものを見つめる視線の中で今も育まれているようです。
取材後、エクシブ湯河原離宮のフロントを飾る平松礼二画伯の絵画に目を留めるそのお姿は、
何かを真剣に見つめることで人生はもっと楽しくなることを物語っていました。
貴重なお話をありがとうございました。