女優

草刈民代さん

“やり抜きたい”という思いを
持ち続けて

2009年にバレエの世界から引退し、女優の道へ華麗なる転身を遂げた草刈民代さん。
声を使わないバレエとの表現と、言葉を発する女優としての表現の間には、想像以上のギャップがあったそうです。
本編ではそのギャップを乗り越えるまでの道のりを克明に語っていただきました。
その強い意志はバレエの中で育まれたものです。
ここでは、草刈さんの真っ直ぐな意思が伝わるエピソードをご紹介します。

―8歳でバレエを始め、常に第一線で活躍されていましたが、途中で辞めたいと思ったことはありませんか

なぜ自分は潰れないのか、ずっと不思議でした

 “辞めちゃおうかな”とか、挫折して心が折れそうになることなどは何度もありましたが、そのたびに、どうして自分は挫折しても潰れないんだろうって不思議でした。踊っていた時には言葉にできませんでしたが、今思えば、“やり抜きたい”という思いがとても強かったのだと思います。もっと踊れるようになりたい、どこまでできるのか、自分の極限を見たいという思いは常に持っていましたから。

―バレエからの引退を決意される時には、どのようなことを考えておられましたか

本当の意味の“維持”ができなくなった時が決断の時

 私にとって何よりも我慢できないことは、同じ状態を維持していくこと自体が目的化してしまうことです。本当の意味での“維持”は、もっと上をめざそうという意思が伴っていなければ達成できません。年齢を重ねることで技術的には落ちていったとしても、それをカバーする工夫をすることで、そこから新たな芸術性が生まれたり、表現力が広がったりすることがありますが、そういう伸び代があって初めて維持できていると言えるわけです。その上昇気流と下降線をたどる要素が上手く噛み合った時、その年齢でなければできない踊りに結びついていくのですが、それでも、バレリーナには身体がついていかなくなる時期が必ず訪れます。すると、文字通りの“維持すること”だけで精一杯になってしまう。そんな状態なのに人前で踊り続けるのは嫌でした。私にその時期が訪れたのは、41歳ぐらい。それが引退の決意につながったのです。

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―ご主人のエッセイによると、「華がある」という言葉に違和感を感じられるとのことですが……

“華”は大切。でも、それだけでは満足できない

 そうなんです。若いころは「華がある」と言っていただいても、ぜんぜん嬉しくなかった(笑)。すごく努力してきたのに、「華がある」のひと言で片付けられてしまうような気分になり、自分自身を認めてもらえていないように感じていました。もちろん、バレリーナであれ女優であれ「華」は大事。それに、「華がある」と言っていただけるのは貴重なことです。今はそういう時期があったことをありがたく思っていますし、年齢を重ねても「華」をさらに開花させられる人になりたいと思っています。年を重ねるほどに「華」というのは努力の裏返しなのだと理解するようになりました。そして、努力しだいで「華」を持ち続けることはできると。そういう先輩方はたくさんいらっしゃいますし、私もそれを目指したいと思っています。

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現在、女優として大活躍しておられる草刈さんだからこそ、言葉のひとつひとつが力強く伝わってきます。
セリフを覚えるのは、振付を覚えるのと同じなので「全然平気。反復は子どものころからずっとやっていますから」ともお話になっておられました。
元気の出るエピソードをありがとうございました。